鳥のうつ病闘病記 ~その①~
2012年9月1日。
朝目覚めると、鳥の身体は動かなくなっていた。
――鳥は、小学校の教員だ。
大阪で生まれ、
大学時代には上京し、一人暮らしを始めた。
四年間で問題なく教員免許も取得し、
性格は人見知りな為、他人からは大人しく見られがちだが、
教員になってもそのスタンスは変わらず、
学級経営自体も最初の数ヶ月こそ苦労したものの、
特に大きな挫折のない人生に、
2012年の今日9月1日は新学期の始まりの日である。
昨日までは夏休みで、
しかし、どうしたことだろう。身体が動かない。というよりも、
働いてて体力的にしんどくなった時に休みたいな、
だが、今日に限ってはおかしい。昨日までは夏休みで、
目覚ましがわりで点けていたテレビの時刻表示を見ると、
「寝てる場合じゃない」
鳥は無理矢理身体を起こし、スーツへと着替えた。
夏休み明け初日は、子ども達の気が緩んでいる為、
自分の気持ちのことなど忘れ、鳥は急いで家を出た。
家を出て学校へ着く頃には、自分に起きた異変など忘れていた。
いつもの通り、
「なんだ、やっぱり楽しいな…」
朝はたまたまどこか調子がおかしかったんだろうと、もう気にしないことにしその日はいつも通り仕事に打ち込んだ。
しかし、異変はその日で終わらなかった。
次の日もそのまた次の日も、鳥は毎日憂鬱な気分に襲われていた。
日に日にその負の気分は増していき、
うつ病を疑い始めた時期だった。
今までも知り合いがうつ病等の何かしらの精神的な病にかかるとこ
しかし、まさか自分がなるとは思っていなかった。いや、
「精神病院」というのは、
どうやら電話予約がいるようだ。
そのクリニックに目星をつけてからどれくらいの時間が経っただろ
電話をかけてしまうと、
「自分はそんなに弱い人間じゃない」
鳥は自分の中で必死に病を否定したが、
スマホの画面には電話番号が表示されている。あとは、
鳥は意を決して発信ボタンを押し電話をかけた。
すぐに、受け付けの女性が電話に出た。
自分の症状を説明し、予約の日取りを決め、
予約は一週間後である。電話をかけたことで何かが吹っ切れ、
それからも鬱々とした日々は続き、
クリニック当日、鳥は緊張しながらも現地に到着し、
中に入ると自分の他にも患者がいて、
鳥の名前を呼ばれ、
笑顔で優しい感じの男性の存在に、なんとか緊張はほぐれ、
生まれから家族構成、病歴などこれまでのことを詳細に聞かれ、
それで問診は終了のようで、
医者のいる部屋に入ると、
先程までの優しい雰囲気は全くなく鳥は瞬時に萎縮してしまった。
「調子悪いの?」
医者が口を開く。
「このテストの結果から見ると、
「はぁ…」
「あんまり気にし過ぎないように、ちょっと薬出しておくからね」
と、医者との話はすぐに終わった。
疲れ……?夏休み明けに??
子どもと会うのがなぜ嫌になる。今まで生きてきて、
納得はできずとも「疲れ」
鳥の症状は、その後もますます悪くなるばかりであった。